2018/08/05

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ロシアを全力で旅してきた。どれくらい全力だったかというと、今回は一度もカメラのシャッターを切らなかったくらい。カバンから取り出す余裕すらなかった。長旅を振り返ると、それがとても残念だったなと思う。一眼レフカメラを構えて、息を止めてシャッターを切って風景を切り取る、という作業をやめたので、その結果が楽しめない。iPhoneで撮った写真は味気ない。

旅の目的は年齢やそのときの状況や立場によって様々で、今はサッカー観戦が主な目的になった。ただ、サッカーだけじゃ物足りない。飛行機はもちろん、鉄道旅、船旅も捨てがたい。デザイン、建築も欠かせない。ただただ知らない町を限界まで歩きたい。おいしいものを食べたい、飲みたい。無理難題にぶち当たる度に、臨機応変にクリアして進む。どこかの国の誰かと語り合う。仲間と喜びを共有する。長旅の中で、仕事も遅れず対応する。日常と非日常を旅に全部詰め込む、それを全うする、そういうロシア旅だったように思う。あの金さん銀さんは「欲を捨てなさい」と言ったけど、私は欲が捨てられない。生きてるうちにやりたいことは全部やりたい。

初めてアムステルダムにアパートを借りたとき、空港で足が震えた。国境を越える度に胸が高鳴った。家にある大量のガイドブックは、不安の表れだ。今はもう、ガイドブックを持って行ったところで開きもしない。インターネットと共に旅ができるからなんとでもなる。1ヶ国だけ訪れて帰国するようなもったいないことはしない。欲張りだとは思うけれど、私には時間がない。年齢的には確実に人生もうあと半分もないと思う。もしかしたらあと1年かもしれないし、1ヶ月かもしれない。生きているうちにまだやりたいことがたくさんある。

ロシアから帰国して思ったのは、もうやりきったなと。死んでも悔いはないんじゃないかと。それくらい全力な旅だった。

18.06.19 Colombia vs Japan 1-2 (Saransk)
18.06.24 Japan vs Senegal 2-2 (Ekaterinbrug)
18.06.28 Japan vs Poland 0-1 (Volgograd)
18.07.02 Bergium vs Japan 3-2 (Rostov)

ブラジルW杯に引き続き、ロシアW杯も日本戦はすべて現地観戦した。モスクワを拠点にして、ロシア国内を行ったりきたり。モスクワのシェレメチェボ空港のラウンジには本当にお世話になった。サッカーの合間にフィンランド、エストニアにも出かけた。旅をしていると、以前できなかったことができるようになったと気づく瞬間がいくつもある。それがとてもうれしい。些細なことでいえば、2010年の夏、シベリア鉄道車内でミルクティーが飲めなかったのが、今回は準備万端で優雅なティータイムが過ごせたこととか。ぼったくられたら泣き寝入りせずに言い返す、取り返す。言葉がわからなくても、理解しようとするし、伝えようと尽くす。列に割り込まれたら「ちょっと!並んでるんだけど!」ってちゃんと言う。旅を繰り返して、度胸だけは育ってきたように思う。相変わらず、ロシア語はもちろん、英語もままならないというのに。

最近はというと、本業のインターネット業務の他、鹿嶋で新たに始めたB&B (Bed & Breakfast)事業に力を入れている。いわゆる民泊だ。設計段階では将来的に簡易宿泊所として営業できるように想定して、建築基準法、旅館業法を調べ尽くして形にした。それが、時代の流れで民泊新法ができて、今年6月に施行された。近い将来、旅館業法が見直される、もしくは新たな法律が必ずできると信じて設計していたから、移転から3年目にしてやっと法が整ったなという印象だった。簡易宿泊所でもよかったが、時代の流れに乗って民泊を選んだのは、私の生活スタイルにより合っていると思ったからだ。鹿嶋市内での民泊届出は、まだ3件。茨城県内ではMARBLE B&Bが届出第一号だった。届出にあたっては何度も東京へ足を運び、新たな法律に備えた勉強会に参加したり、行政書士に相談をしたり、必要書類を揃えるだけでもかなり困難を極めた。東京や京都などの観光地ならまだしも、茨城の田舎町で新たな事業をやるのは風当たりも大きい。それでも、この町に「泊まりたい」と思える居心地のいい空間をつくりたかった。

たった4部屋の小さなB&B、今日はひたちなか市で開催されている「ROCK IN JAPAN FES 2018」に参戦している若者たちが宿泊している。全室掃除機をかけ、拭き掃除をし、布団をハシゴを使ってロフトに上げ、ベッドメイキング、トイレ掃除、朝食の買い出し、部屋の案内、洗濯、ゲストが快適に過ごせるようにあらゆることをする。つまり、私が旅先で「こういう宿に泊まりたい」というのを形にしている。B&Bがあまり忙しくても正直困る。本業に支障がない程度に、常に満室でなくていい。そういう点で、民泊新法の「営業は年間180日以内」というのは、多くのホストが納得いかない中、私にはちょうどよかった。

東京での暮らしを今でも恋しく思ったりする。ただ、B&Bの経営は東京に居続けたら実現できなかった。世界中からサッカーファンがやってきたり、今日みたいにサッカーにまったく興味のない人もやってくる。言葉を交わすと、建築関係の方だったり、同業者だったりで、話が盛り上がったりする。東京でインターネットの仕事だけやっていたら、こういう出会いはなかったし、こんなに体を動かすこともなく淡々とパソコンと向き合うだけの日々だった。実際には、楽しいことは少ない。大変なことの方が断然多いけれど、しばらく改善を繰り返しながらやってみようと思う。

It’s said that to get something throws something away.
何かを得るということは、何かを捨てるということ

ジーコのお言葉。鹿島アントラーズをつくったジーコが、鹿島に帰ってきた。この町で暮らしていると、悲しみと喜びの振り幅が大きい。

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